東北大学大学院医学系研究科 医科学修士課程国際教育コース
International Course of “Public Health Science for Human Security” (ヒューマン・セキュリティと健康)
東北大学大学院医学系研究科は、「巾広い教養と豊かな感性に支えられた倫理性を持ち、かつ、高度な専門的知識と問題解決能力を備え、世界に貢献しうる国際性豊かな人材を育成する」との基本方針に基づき、アジアをはじめとする諸外国の留学生および日本の学生・社会人が英語で受講できる国際教育コース「Public Health Science for Human Security」(ヒューマン・セキュリティと健康)を平成18年度に開講します。 同コースでは、人々の健康と生命を脅かす感染症等の疾病、公害、災害、医療事故等の可避死事象(Preventable death events)の実態、およびその背景にある社会システム要因の解明・改善に関する教育を通じて、研究者、政策指導者、専門的職業人の育成をめざします。
コースの概要
目的
1990年代初頭に冷戦が終結して以降、従来の「国家安全保障」に代わって、疾病、災害、貧困、紛争などによる「人間の安全」への脅威に対する取組みを重視する「ヒューマン・セキュリティ」(人間の安全保障)の考え方が、新しい国際社会を構築するキー概念として注目されるようになりました。 日本政府は早くからこれを国際貢献の柱にしたいとの意向を表明し、国連における「ヒューマン・セキュリティ基金」の創設や、緒方貞子氏、アマルティア・セン氏を共同議長とする「ヒューマン・セキュリティ委員会」の設立、「人間の安全保障草の根無償」による政府開発援助の促進などを通じて、ヒューマン・セキュリティの考え方を積極的に推進してきました。
とりわけアジア地域をはじめとする開発途上の国々では、貧困、災害、劣悪な環境衛生と栄養障害などを背景に、いまなおたくさんの人々が、本来死ななくてすむはずの傷病によって生命と尊厳を脅かされています。さらに、HIV/AIDS やSARSのような国際感染症や環境汚染は国境を越えて人々の暮らしと安全を脅しています。 21世紀の国際社会が直面するこれらインセキュリティの実体はきわめて複合的な要因によってもたらされており、従来の専門知の壁を超えた複合的な視点で問題解決に向けた取り組みを推進できる新しいリーダーを必要としています。
医科学修士課程国際教育コース「ヒューマン・セキュリティと健康」では、医科学と国際保健学の最新知見に人文・社会科学の方法論を統合することによって、人々のいのちと健康を脅かしている要因の構造を理解し解決する能力を育て、日本と国際社会において政策や地域社会のリーダーとしてヒューマン・セキュリティの実現に貢献できる専門的職業人と研究者の育成をめざします。
なお、「ヒューマン・セキュリティ」に関する研究は従来、安全保障論や国際関係論、国際政治学の文脈の中で進められており、保健・医療という、同理念を実現するための具体的課題と実践を対象化した人材育成の場は、現時点では本コースが唯一のものです。
対象と募集員数
外国人留学生を主な対象としますが、日本人学生も履修でき、年度受入れ員数は外国人留学生6名程度で、日本人学生若干名とします。 入学日は10月1日(10月入学)と4月1日(4月入学)ですが、日本人学生は4月入学のみとします。
外国人留学生は定員外、日本人学生は修士課程20名の定員内での募集とします。
特徴
- 同コースは、医学系研究科が提供する科目に加えて、平成17年度から開始された「ヒューマン・セキュリティ連携国際教育プログラム」の枠組みに沿って農学研究科、環境科学研究科、国際文化研究科が英語で提供する共通科目(6科目)を履修でき、また必修科目はすべて英語で履修します。
- 同コースでは、通常の講義に加えてゼミ形式の講義や演習、グループ・ワークを積極的に取り入れ、また、東北大学インターネット・スクール(ISTU)を通じてe-learningを行うなど、外国人留学生に適したさまざまな教育手法を適用または開発し、受講者評価を通じて継続的な改善を行います。
- ケース・スタディを重視して問題指向型および参加型の学習を進めるほか、異なる文化・社会を背景に持つ留学生が集うことで学生間の討議と交流が多様性の理解と国際感覚の育成に役立つように配慮します。
- 平成20年度を目標に、インターネット・スクール(ISTU)とe-learning教材を活用することで海外在住のために対面講義が難しい海外講師の授業も可能にします。これにより、世界各国の事例をもとに国・地域の多様性に対応した授業を可能にするほか、たとえばベルギーの災害疫学センター、WHOのエイズ・結核対策専門官、ダッカの国際下痢研究所、マニラの感染症病院、ミャンマーのマラリア対策事業専門家など、各テーマについてトップ・レベルの講師による授業の実現をめざします。 また、IT環境が整えば遠隔講義やTVカンファレンスを積極的に採用して海外の提携大学との共同講義やフィールドとつないだケース・スタディ授業を積極的に推進する計画です。
教科の構成
◆ 必修科目(9科目26単位)
- 「国際保健概論」(上原鳴夫教授/押谷仁教授) *2単位
Introduction of International Health - 「環境と健康?化学的環境を中心に」(佐藤洋教授) *2単位
Environment and Health: with special attention to chemical environment - 「新興再興感染症とその対策」(服部俊夫教授/押谷仁教授)*2単位
Emerging/Reemerging Diseases - 「感染症アウトブレイクと災害保健管理」(押谷仁教授/賀来満夫教授/上原鳴夫教授) *2単位
Outbreaks and disaster health management - 「開発経済学」(米倉等教授、農学研究科) *2単位
Development Economics - 「環境とエネルギーの安全保障問題」(明日香壽川教授/石井敦助教授、環境科学研究科) *2単位
Environmental Security and Energy Security - 「アジア社会の公共分野:持続的なヒューマン・セキュリティの条件」(サドリア教授、国際文化研究科)*2単位
Public Sphere in Asian Societies: Condition for a Sustainable Human Security - 「保健医療の質・安全管理」(上原鳴夫教授)*2単位
Quality and Safety in Health Services - 論文研究(ゼミ&演習); 指導教員が担当 *10単位
◆ 選択必修科目(下記から2科目4単位を選択)
- 「ヒューマン・セキュリティ特論」(4研究科合同)*2単位
Special Lectures on Human Security - 「水環境論」(風間聡助教授、環境科学研究科)*2単位
Hydro-Environment Studies - 「食糧経済学」(伊藤房雄助教授、農学研究科)*2単位
Food Economics - 「消費資源と社会的不安定」(プシュパラール助教授、国際文化研究科)*2単位
Consumable Resources and Social Conflicts
受入れ分野及び研究テーマ
- 国際保健学分野 上原 鳴夫教授 (国際保健、災害保健管理、保健医療の質・安全管理)
- 環境保健医学分野 佐藤 洋教授 (環境中毒学、行動奇形学、周産期化学物質曝露の生後の発達への影響)
- 微生物学分野 押谷 仁 教授 (感染症のリスクマネジメントとコントロール、新興感染症の発生要因)
追加募集日程
○外国人留学生
毎年、翌年度(4月入学、10月入学)の入学希望者を募集します。
平成19年度入学希望者につき下記の日程で追加募集を行います。
| 平成19年度10月入学 | |
|---|---|
| 募集要項の公表 | 平成18年12月 |
| 出願期間 | 平成19年5月1日(火)?5月25日(金) |
| 書類審査 | 平成19年6月7日(木) |
| 面接または電話インタビュー | 個別に通知 |
| 合格発表日 | 平成19年6月28日(木) |
| 入学日 | 平成19年10月1日(月) |
○日本人学生
一般の修士課程医科学専攻と同一とします。
選考方法
1.外国人出願者の場合
- 選考は書類審査および面接または電話インタビュー(海外在住者の場合)によって行います。面接または電話インタビューの日時は個別に通知します。
- 提出書類: 願書(申請書)、卒業証書(修了証書)、成績証明書、推薦書(2名)、英文エッセイ(500語?800語)、英語能力証明書、健康診断書
- 推薦書のうち1通は応募者の学業または研究能力について知る大学教官、又は、業務遂行能力について評価できる職場上司のものが必要です。
- 国内在住者は大学において面接を行います。海外在住者は予め打合せた日に電話インタビューを行います。
- 18年度と19年度については国際的に通用する英語能力試験またはこれに代わる英語能力証明の提出を求め、20年度以降は、TOEFL試験のスコア550点以上であることを資格要件とする予定です。
2.日本人出願者の場合
一般の修士課程医科学専攻を受験する日本人学生と同一とします。
東北大学の国際化事業における本コース設置の意義について
東北大学は、2000年8月に国際交流を通じて世界最高水準の研究教育拠点作りを目指すことを世界に向けて宣言し、2004年4月の法人化に当たり「国際競争力のある研究・教育拠点」として発展することを主要目標に掲げました。このように国際交流の推進は、東北大学の使命・目標の達成にとってますます枢要な位置を占めるものとなっており、事業の立案・実施に当たって次のような主要目的を最大限に果たすことを基本指針としています。
- 国際学術ネットワークを通じた世界最高水準の研究を推進する。
- 広く世界から意欲と能力を備えた俊秀を受け入れて世界の発展に役立つ指導的人材を育成する。
- 研究教育成果を国際社会に発信するとともに、国際貢献に活用する。
- 上記を達成するために研究教育基盤を強化し、本学の国際的知名度・信頼性を向上させる。
本コースは、日本が提唱し推進する崇高な理念を実現するために本学の知を挙げてこれに貢献するものであり、世界とりわけアジアのトップ・レベルの俊秀を受け入れて各国および国際社会に指導的人材を輩出せんとするもので、東北大学の新しい国際化戦略の端緒を拓くものと期待しています。
とくに、医学系研究科に英語で受講できるコースを新たに設置することで、これまで欧米に流れていた途上国の優秀な人材や行政官等指導的立場の社会人を受け入れることが可能になるほか、日本人学生についても、英語環境のもとで各国のトップ・レベルの留学生とともに学ぶことで、世界に貢献しうる国際性豊かな人材を育成できるものと期待しています。









